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IMAへのメール


 
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●準備は早かった…
  彼が、まだ「公務員」時代に、ある知人の紹介で会った。彼が出馬予定の選挙までまだ、2年以上も前のことだった。
  知人曰わく「とにかく、ヤマグチさんの話をしたら、是非会わせて欲しい…と、選挙はまだまだ先だし、彼も今、某県の幹部職員なので、とにかく多忙な方なんですが…実は、私とアメリカの大学が同じでして、先輩になるんです!」ということで、会うことにしました。彼は、弁舌さわやか、IQも高い…というのがよくわかり…某県では、主に政策企画のトップである…という「自信」と「プライド」がよく現れている…人物でした。しかも、その某県の知事の選挙の「裏参謀」を自認し、実際、「選挙」を仕切ってたのは、事実のようでした。まあ…ボクとしては、まだまだ先のことだし…『先ず、「決意」が固まって、県庁を辞めてから、来て下さい』ということで、その初対面は終わりました。
  それから2年近くは音沙汰無しでした。そして、再び彼から連絡があったのは、彼が立候補予定の、A市の市長選挙のおよそ一年半前でした。
  『ヤマグチさん、ご無沙汰してます!いよいよ決断して、退職もしました!是非ご指導お願いします!』それから、まもなくして、彼の依頼通りに、選挙本番までの政治活動と選挙中の活動のコンサルタント契約、並びに各種印刷物、制作物のデザイン契約を締結いたしました。
  A市は、有権者が8万人程度の小さな街なので、時間は余りにあまりあるほどです。ボクが、全力をフル回転すれば2ヶ月もあれば、いいような選挙区ですから(苦笑)


●「なんじゃこりゃー!!!」
  契約後、ボクは大体、直ちに制作に入ります。候補者名のロゴデザイン、後援会並びに、政治団体のロゴデザイン、キャッチコピーなどです。
  そして、それらが一通りできあがり…開設してまもない、彼の、そのA市でのメインの駅前にある事務所に向かいました。オシャレなデザイナーズビルでした。部屋も広く、明るいオフィスでした。ボクは、応接室に通されました。
  そして、そこでボクは驚愕するのです。もう「開いた口が塞がらない…」とはこのことだという「見本」の状況が現出したのです。『なんじゃこりゃー!!!』でした。
  応接セットのガラス張りの綺麗な、大きなテーブルに、彼の顔写真が入った各種印刷物がイロイロあるのです。それも「校正モノ」ではありません。完成されて「納入」されたモノなのです。リーフレット、名刺、ビラ、大体、最初に候補者が必ず必要なアイテムです。しかも、プロのボクが見たら…まさに「なんじゃーコリャー!!!(苦笑)」の類のモノで、候補者名のロゴなんて、たとえば、名刺は「ゴシック」なら、リーフレットは「明朝」という風に、全く統一されず、顔写真もそれぞれの印刷物で、すべて違うモノばかり…というシロモノ。ボクは、ご存じ「瞬間湯沸かし器」です。筋金入りの。一気に、頭は「沸騰」どころか…「水蒸気爆発」でした(苦笑)。
  しばらくして、彼が応接間に入って来ました。そんなボクの「噴火状態」も気がつかず、上機嫌の自信溢れる態度でです。
  彼が席につくなり…ボクはマシンガンならぬ、バズーカ砲トークを浴びせました。もう「爆発」してましたから(苦笑)
  『君なー、なんやコレ!!こういうモノはボクが作るいうことで、こないだ契約したやん!!なんでこんなもんがココにあるの??しかも、デザインはバラバラ!!イメージ戦略のコンセプトもクソもあったもんやないし…どういうことやねん!!こういう制作物はボクがつくらんと意味無いやん!ただ、デザインしたらエエちゅうもんと違うんじゃー!選挙関係のもんは!選挙の戦略や戦術と連動するもんでないといかんのじゃー!なんでこんな勝手なことしたんやー!!』と、怒り飛ばしました。彼は、恐縮至極の顔で『実は、判ってたんですが…知り合いにデザイナーも沢山いまして、それぞれが、これ全部、無料で作ってくれたんです!だからロゴもバラバラなんです!スミマセン!!…』言い訳を続けましたが…ボクはこういう「候補者」が一番嫌いです。お話になりません。アメリカの大学まで出てるエリートが、「契約」の意味が判ってないとは思いません。ボクを甘くみてたんだと思います。ボクは、こういうときは非常に「厳しい」です。こういう候補と一年近く、つきあえる筈がありません。こんなことが…これからも、ドンドンあるかも…・・というタイプ…・・と判断しました。その場でボクは「即決」こう言って、引導を渡しました。
  『大事な知人の紹介ではあるが、降ろさせてもらうわ!あんたの好きなようにやり!!』
  「噴火」したまま…事務所を出ました。ボクから契約解除でした。


●「コンサル契約だけは!!なんとか!!」
  その後、彼からお詫びと同時に、「コンサル契約だけは…なんとか再考を!!」と…懇願され…知人の顔も立てて…再契約しました。
  但し、デザイン等は一切しません。彼等から電話等で「選挙や事前運動での質問」があれば答える…という程度の「限定的コンサル契約」です。それ以外は、スケジュールや、運動の指示指導は一切しませんでした。
  「どうぞ、好きなようにやって頂戴!!」でした。彼等は彼等で、まあ、それなりに選挙の経験もあるので…それもありだったのでしょう。「彼等」という意味は、候補者の肉親のことです。親兄弟が率先して手伝ってました。
  しかし…結局、告示のヒト月くらい前までの、およそ一年間、ほとんどコレと言った「質問」や「相談」はありませんでした。コンサル料は振り込まれてるのにです。ボクは、コレはあの「参院選」の時の陣営と同じやな…と感じていました(こんな候補は、落選するVOL.1の陣営)。まあ、しかし、そうとはいえ、たまには、ボクも事務所は覗きましたけどね(苦笑)


●「世論調査はしたほうがエエでー!!」
  いよいよ、告示日まで、あと一ヶ月という頃に、彼と会いました。まあ…最後の「愛の手」みたいなもんです。『どうや!?順調か?街の反応はどうや?いけそうな気がするか?』と聞きました。彼は、自信があるらしく…明るい笑顔と、なんの不安もありません…という感じの顔で対応しました。
  『しかしまあ、調査を勧めるわ!客観情勢を知るべきや!!どうや!実施するか!?』彼は、『是非やってください!!お願いします!!』と屈託無く返事しました。彼は「勝ってる!!」とよほどの「自信」があったものと思われます。


●意気揚々から、顔面蒼白!!
  我がIMA選挙戦略研究所の有権者動向調査は、よく当たります。これまでの「的中率」はほぼ100%近い実績です。
  調査結果が出ました。
  有効回答数は607採りました。結局、告示前一ヶ月の時点で、立候補予定者は4人になっていました。全員新人です。しかし、一人は、現職のA市の市会議員でよくトップ当選をしてた有力候補。そして、「対抗」は彼。あとは「泡沫候補」が二人です。
  先ず、「知名度」、現職市議が60.5%、彼が45.3%、あとの二人は二人とも10%ほど。
  重要な、「支持度」ですが、現職市議が9.4%でトップ。彼が3.3%で二位。あとの泡沫候補は、いずれも0.2%〜0.3%。
  一ヶ月後の選挙で、まだ誰に投票か決めていない人が70%もありました。
  こんな時期にまだ、「未決」が70%もいる…というのは、それぞれの「事前運動」が低調な証拠です。皆、生温い運動ちゅうことです。しかし、彼は現職市議にトリプルスコアで負けています。お話になりません。
  たとえば、このままの「生温い運動」のまま、選挙戦に突入すると…結果は、現職市議が、20000票なら、彼は7000票が良いところです。
  「アアア!!!お話にならんがながーーー!!」とボクはため息が出ました。
  集計がずべて終了し、冊子にまとめ、すぐに彼を呼びました。
  ボクの自宅近くにある、ボクの「迎賓館」とも言うべき御影蘇州園のBARです。そうです、彼は事前運動の山場で、夜の11時くらいでないと、ココまで足を運べません。彼は、弟を連れて来ました。弟は、確か半年くらい前から、仕事を休業し、献身的に兄の運動を手伝っていました。
  彼は、やはり「意気揚々」として、バーの片隅にある、ボクが座ってるソファーのところへやって来ました。二人がソファーに座ってまもなく…ボクは彼等に調査資料を見せ…説明に入りました。
  『とにかく、君らなあ…好きなようにこれまでやってきた結果がコレや!!トリプルで離されてるでー!!このまま選挙入ったら、まあ、相手が20000ならオマエさんは、7000票がエエとこや!!惨敗やで!!どないするねん!!ウチの調査は、これまで沢山の実績あるけど、的中率100%や!!』
  二人とも、「顔面蒼白」という感じになりました。マジマジと調査結果を二人とも見ていました。ちょっと可哀想になりました。たぶん、彼は「オレが勝たな、どないすんねん!某県では、ナンバー2の大物や、テレビにもよく出たし、政策には自信がある!それが、こんな小さい街の市長になってやろうと…してるねん!オレを当選させるのが当たり前やろー!!」という風な感じであったのは間違いないと思います。コレは推測ですが。
  ボクは、畳み掛けました。『とにかくな、このまま君らの好きなようにやってたら…マジ惨敗や!もう次は無いわ!!どうや!?今から、まだ一ヶ月ある!ある意味、幸いなことに、現職市議が一番とはいえ…9.4%の支持率ちゅうのは低い!!まだ、この時点で70%の人が誰に投票か決めてない!!今から、真摯な気持ちになって、オレの言う作戦を聞く気があるなら…話をしたってもエエが…どうや?』コンサル契約は、まだ生きてるのですから・・教えるのは・当たり前のことなんですが…そこは、「人間」です。ボクも厳しく、冷たいです(苦笑)
  兄弟二人が揃って言いました。『お願いします!!明日から、間に合うものなら、言われることは、なんでもやります!!是非ご指導下さい!!』
  『判った!!でも、すべてやっても手遅れかもしれんでー!!でもな…20000票対7000票ちゅうのは無くなるわ!!それは自信ある!!エエな!!ホナ、今から話すことをよくメモしいやー!!』
  深夜まで、約2時間の「熱弁レクチュア」をしました。
  数日後、ボクは現地へ入り、言ったことを「実行」してるか確認に行きました。事務所へ入らなくても…それは判ることでした(ノウハウなので書けません)。


●手遅れだった!!
  今思えば、2ヶ月前に、その「巻き返し作戦」を実施してれば勝ってたかもしれません。
  選挙結果は、現職市議、18827票で初当選。彼は15220票で次点。泡沫は2人とも2000票台以下。
  まあ…一ヶ月の「怒濤の運動」でよく追い上げたモノとは思いますが…選挙が終わって、ヒト月位経った頃…ボクの制作スタジオに彼の弟が訪ねて来ました。まあ「お礼の挨拶回り」ということでしょう。
  ボクは、彼にボクの手作りのカルボナーラのパスタを作り、彼の回顧話を聞きました。彼はこんなことを言いました。『兄は、最初から、ヤマグチさんとは、コンサル契約をして、足止めし、敵の現職市議とは契約しないように…・する・・という戦略だったそうです。だから、当初から言うことを聞くつもりは無かったと言ってました』
  まあ…確かに、この候補と契約した後に、結果当選した現職市議の長年の友人から、『現職市議の市長選のコンサルをやってもらえません?』という話が来たのは事実です。そういう意味では「戦略」のヒトツは成功していたのは間違いないですが…・ね
(黒沢明の用心棒の世界じゃな…苦笑)


●教訓 
まあ…VOL.1で取りあげた問題点とほぼ同じ。
「自惚れ」と「自信過剰」は命取り、となるかな…


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