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IMAへのメール


 
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●2006年初春
  『ああー、ヤマちゃん!今、電話大丈夫?あのね、田舎の町長選挙なんやけど、さっきそこの自民党の支部長から電話があってな…去年の夏から地元の自民党支部の推薦で立候補してはる人がおんねんけど、どうも苦戦してはるらしいわ。現職町長がかなりのやり手の人らしくて、引退しはった県知事の可愛がってはった人で、その現職がその県のその町を含むエリアの県民局長やってた時に、その前知事が『君が出ろ!』という肝いりで町長選に出て当選しはってな…まあ…かなりの強権政治もやってはる人らしいわ…そんでな、とにかく県連からなんとか選挙のプロを送り込んでくれんやろか!?このままでは落選は間違いない…いうて危機感持ってはんねん!どやろ?ヤマちゃん!あかんかー?やったってくれへんかー!?実を言うとなー、今のウチの県連会長は、その現職町長を密かに応援してはるねん!そやから、ちょっと、オレとしては難しい立場やねん!なんとかやったってくれへんかなー!!??』
  A県の、旧知の自民党県連事務局長からの電話でした。複雑な『事情』です。その町の自民党支部は新人候補を推薦し、県連会長は密かにとはいえ…現職町長を支援していると…まあ、政治の世界ではよくあることですが…(苦笑)
  『ほんで、その町はどこや?その新人は、いくつや?去年の夏まで何をしてはった人や?』ボクは彼に次々と質問。判ったことは、その町は、所謂『近郊農村地帯』しかし、ここ10年で、都心からの移住者が、小さな庭付き一戸建てを建てたり、買ったりして住民の3割くらいを占めてるという町。新人候補は去年の夏まで、他の市の公務員だったが、定年前に退職し、 一念発起 して、町長選挙挑戦を表明し、以来もうすでに半年は事前運動をやってるとのこと。町の有権者数は約2万5千人。世帯数は、約1万2千。ビラを全町全戸配布しても僅か1万2千枚(経費は僅かやな)
  そして、事務局長が畳み掛けるように続けました『とにかく、ヤマちゃん、一回、そこの責任者と会ったってくれんかー!頼むわ!!』
  とりあえず、ボクは現地へ行って、状況を聞くことにしました。なんせ、投票日まで、あと2ヶ月ちょっとしか残っていません。これまで彼らがこの半年間どんな運動をやってきたのか…を聞かないとお話になりません。ボクのお得意のイメージ戦略は、最初の最初からスタートしてこそ…のモノです。
  おそらく、印刷物やその他の看板等もすでにあるはずです。それらが『先行』していては、かなり難しいのです。

●稲穂の看板(苦笑)
  数日後、現地へ向かいました。偶然にも、この町には叔父さんが住まいしてた町です。叔父さんも所謂、都会からの転出組で、サラリーマンを退職したあと、この町に約100坪の土地を購入し一戸建てを建てて暮らしてはりました。この時は、すでに叔父は亡くなっており、ボクの従兄弟がその家に住んでいました。しかも、その新人候補は、その叔父の家が建つ同じ村の人でした。その叔父の家を横目に見ながら、数分後にその指定された新人候補の後援会事務所に到着しました。広い駐車場のある広いプレハブ事務所でした。事務所の屋根に大きな看板が目立ちました。「稲穂の絵」が描かれた…田舎臭い(苦笑)、ボクに言わせると
  『止めてくれーーーーー!』と叫びたくなる(笑)イメージ戦略もくそも無い…どうしようもないモノでした。コレを見ただけで…すべてが読めました(笑)。事務所には沢山の人がいました(アチャー!です)ボクのような、県連推薦の選挙プロが来るということで…候補の幹部が10数人も集まってました。また、おばさん部隊もウロウロいました(苦笑)やはり「田舎の選挙」です。「お祭り」なんです。これはよく判ります(苦笑)いつも、テーブルには「おにぎり」や「お饅頭」等のお菓子が盛りだくさん置かれ…選挙好きそうな顔した爺様達が、何をするでなく…ソファーにデンと座り、ウダウダ話しているのです(苦笑)
  『スミマセンが…代表を2人ほど決めて下さい!どっか個室はないですか?そこでお話聞いてみたいです!』と強い口調で最初に応対した人に伝えました。皆、ボクを見る視線は、やはりいずこも同じ、「宇宙人」を見るような目でした(苦笑)
  カーテンで仕切られた「会議室」のようなところに案内されました。そこには、もうこれまでに出来上がっていた「ビラ」「リーフレット」等の印刷物や「ノボリ」等が沢山積み上げられていました。プロのボクが見て、「目を覆う」出来のモノでした。イメージ戦略もクソもあったもんやおまへん(苦笑)
  使われてる候補者の顔写真は、まるで「葬式」の時に飾る「遺影」のような暗い暗い表情の写真。印刷物に使用しているメインカラーは主にブルーなのに…他の「ノボリ」等の制作物には「赤」。シンボルカラーもなにもあったもんやおまへん(苦笑)基本、デザインなんてもんでは無く…ただ、選挙とは関係なく、近所の地元の印刷屋さんが「適当」に作ったものばかり…・・それが、配られてるのかいないのか「ヤマ」のような「在庫」。ボクは、その2名の代表がボクのところに入ってくるまでの数分間…
  「コリャーあかんわー、そらこんなんで、半年やってても浮動票なんて一票も掴んでないわー!!」と…・・先が思いやられる…感じになってました。

●すべて!全部!廃棄せよ!出来るかー!?
  まもなく、お爺さんが二人入って来ました。一人は、後援会長さん。一人は事務局長さんです。お二人とも70代前半くらいか…どちらも、人柄のイイ感じの人たちでした。後援会長さんは、その候補者が勤務していた役所での元上司。経理責任者は、この町の役所の幹部OBさんでした。ひととおり、これまでの運動のことや、現職陣営の動きやヒアリングをし…ではいいですか…とボクがまくし立てました。
  『あんね、県連局長から情勢のことは聞いてましたが、まあその通りですね、このままでは間違いなく負けます!相手はこの4年間、町の広報誌を使って、ずっと事前運動をやってます!こっちの今お聞きしたような運動ではとても歯が立ちません!致命的なのは、コレです!なんですか?この候補者の顔写真!葬式の「遺影」でっせー!こんなん町に出したら…票減りますわー!制作物の色も統一してないし…田舎の選挙やから、人脈や、縁戚等で票固めはわかりますけど…都心から移住してきた新住民有権者が5000人以上はおるんとちゃいますか?この町は。そんな人等がこんなリーフレットや写真見ても、この人に投票しよう…なんて思いませんでー!!』とマシンガントークでぶった切りました(イヤ、ぶった撃ちか)。
  彼らは「意気消沈」し、『そやから、なんとかこれは、プロに頼まなあかんなあーーーと県連にお願いしたんですわ…なんとかあと2ヶ月しかないけど…お宅…やってもらえまへんやろかーあきまへんか!!??』ボクはあまり自信がありませんでした。なんせ、もうすでに『変なイメージ』で売り出されてます。半年もの間です。しかし、そこはやはり、プロ中のプロのボクです。こんな候補をもし勝たせたら…プライドが擽られるなあ…自民の地元支部が支援でも、県連会長は現職支援やし、又、実を言うとこの当時の県連会長はボクの嫌いなタイプやったし(苦笑)…ウン!ヨシ!と思い、『あんねー、これまで印刷したすべてのモノや、こんなノボリや、表の稲穂の看板や…すべて全部廃棄!してくれますか?それが出来ますか?お金をドブにほかす行為になりますけど…もし、それが出来るなら、今から、この2ヶ月、ゼロからの再スタートを覚悟で皆さんがついてくるなら、やってもいいですわ!どうです?』彼ら二人は顔を見合わせて…
  『ホンマでっかー!!ほな、今日あと数時間したら、候補者がココへ帰ってきますんで、すぐに相談してお返事させてください!それまで待って下さい!』ボクはとりあえず、帰路につきました。

●再スタート!!イメージ戦略開始!!
  数時間後、電話が後援会長からありました。『候補者も是非お願いしたいと言いました!そのすべて廃棄!もOKです!!なんとかお願いします!勝たして下さい!!』『了解!じゃ、先ず、早速顔写真をボクの専属カメラマンで撮り直します!すぐにいつ行けるか聞いといてください!』
  数日後、ボクの専属カメラマンのスタジオで写真を撮りました。もう、見違えるほどの候補者写真が撮れました。ボクのやり方は、基本、撮影した写真は、すべて全部ボクが貰い、ボク一人でどれを使うか決めます。候補者や、陣営の人たちに選ぶ「権利」を与えると…決まりません(苦笑)皆、好き勝手なことを言いますから…
  そして、一週間ほどして、その「見違えるほどの出来の顔写真」を入れて作った、すべての印刷物、制作物のデザインラフを持参し、陣営幹部と会いました。それは、もう皆さんが「こんなイイ顔、見たこと無いなあ…」と驚愕するほどのイイ笑顔の写真だったのです。
  この新人候補の「すべて一新!イメージ戦略」は、この町に都心から移り住んだ新住民の約5000人超の人たちがターゲットでした。旧農村部の票はおそらく完全に二分されるでしょう。現職町長も地元の村の住人です。激戦になればなるほど、互角の戦いになるのは間違いありません。よって、勝敗の行方を決定づけるのは、この「新住民」の投票動向です。彼等の投票率はおそらく低いでしょうが…ココを6対4か、7対3で勝てば間違いなく「勝利」します。ボクの眼力はそう見ていました。よって、その「新住民」を意識した、「都会型のボクの得意とするイメージ選挙」をビラで展開すれば「逆転勝利」は十分にあり得る…・・とボクは確信していました。各種制作物のデザインは、この我が陣営の後援会事務所に集まってるような「村型選挙が好きな人たち」には理解でけんやろなあ…と思いつつ(苦笑)作り上げたものでした。
  案の定…そういう「事件」が起きました(苦笑)。後援会長と事務局長さんは、すでにボクに「洗脳」されてるので…なんの異論も無く…承伏されて、喜んで…受け入れたのですが…ボクがレクチュアして帰ったあと、候補者の縁戚にあたる人で、よく地元の町会議員選挙やら、前回の町長選挙等で「参謀的」に活躍した…と自負する人物が「こんなもん…!!!」とクレームをつけたらしいです。その人は、ボクがこの陣営に入るまで、この陣営の「選挙参謀」的な立場でいたらしく…まあ…立場を奪われて…そう言うしかないですわな(笑)その後も、この人は、選挙が終わるまで…こういう「ポジション」を貫かれましたなあ(苦笑)この人、後にもっと「問題」を起こします(苦笑)
  とにかく、ボクは『いいですか!ボクはね、そこの事務所に集まってくるような、選挙好きの村の人を喜ばすために、ビラ等を作ってません!そこに集まる人なんか、一切頭にありません!ボクがターゲットにしてるのは、新住民です!いいですね!理解できますね!この作戦を変更したら、負けますよ!』で…当然ですが押し切りました。後援会長や事務局長は勿論「納得了解!」でした。

●一体全体、どっちの味方じゃ!!??
  その「反乱分子」はことあるごとに、「アン人は、いったいどっちの味方なんじゃ?」という動きをしました。こっちがデザイン作って、出来上がった印刷物や、看板等が陣営に納入されるたびに…どうもその都度、地元の町役場の選挙管理委員会へ持ち込み、『コレ違反ちゃうか!違反やろ!絶対違反の筈や!!』と具申してたようなのです。変な話でしょ(苦笑)候補の縁戚でっせ!?こっちの陣営の元幹部でっせ!?人というのはあさはかなモンですやろ(苦笑)。田舎の役所の選挙管理委員会というのは、ほとんどが、町の町長直属の総務課が兼ねます。つまり、現職市長の「秘書達」が選挙管理という「絶対中立」であるべきポジションの仕事を兼務するのです(苦笑)。そんなところへ「違反でしょ!」と違反でないものを持ち込むと、どうなります?先ずね、普段は総務課の人たちですから、彼等も選挙は殆ど「素人」なのです。いつも選挙のたびに、「公職選挙法」の「解説書」を右手に持って選挙管理をやってるんです。ボクがやる「先進」の「違反はどうかわかりにくいが、違反ではない、レベルの高い合法選挙運動」は彼等では判断つきません。彼等にとっては、正直「ワカランなあ…エエんかな?コレ、違反やろか?」てなもんなんです。
  …でどどのつまり、そのあまり判らんまま…我が陣営事務所にこういう電話を入れて来ます。『選挙管理委員会ですが、○○○は違反の可能性がありますので、すぐに止めてください!』そんな電話がかかってくると、ボクみたいなプロがついてない事務所は、そら殆ど、言うとおりその○○○を中止します。皆、警察に告発しますよーと言われたら恐いですから。
  この選挙で我が陣営から、『ヤマグチさん!○○○が違反や言うて、選挙管理委委員会から電話ありましたでー!!』という「事件」が数回ありました。ボクはその都度、『大丈夫です!違反ではありません!選挙管理委員会は敵陣営みたいなもんです。公正中立ではありません。なんなら、県の選挙管理委員会とか、県警の捜査2課から違反ではない…のお墨付きとりましょうか?』てな具合でした。実際、2〜3回、実際にボクのスタッフに県警や、県の選挙管理委員会にまで足を運んで貰い…「お墨付き」を取ったくらいでしたから。誠にもって「時間の無駄使い行為」をさせれれたわけです。こんな「反乱分子」がいると…本当に困ったものでした(苦笑)。ボクは腹が立つを通り越えて…むなしさがありました。

●さて…どうなるか…
  選挙に「公正中立」であるべき、選挙管理委員会まで「どっちの味方やねん?」という「田舎の選挙」には、ほんと辟易します。そういう県の選挙管理委員会が「違反では無い!」の「お墨付き」ですら、この町の「偏った選挙管理委員会」はこう宣うのです『たとえ、県が違反じゃや無い!と言っても、ウチの町の選挙は、ウチの町の選挙管理委員会が独自の判断してもイイのです!だから違反ですから、止めて下さい』と来るのです。おそらく推測ですが…現職町長の直属総務課です。聞けば相当、職員にはキツイ恐い町長だったらしく、恐らく『こらーーー!課長!はよ、あれを止めささんかいー!!首にするぞー!!おまえ!!言うとおり敵事務所に目の前で電話せーーーーー!!!』とやられてたんじゃないかと…(苦笑)
  しかし、ボクは100%違反じゃないと確信を持っているので…そういうときは、ボクのスタッフに県警の捜査2課の「お墨付き」を貰ってきて、陣営を安心させてあげてー!!とお願いしてたのでした。
  そんなこんなの日々でしたが、事務所とは関係なく、こちらの進める「イメージ戦略ビラ作戦」は順調に回数を重ね滞りなく実行できていました。後援会なんか何ら関係ありません(苦笑)
  そして、ついに告示日が来ました。小さな町ですから選挙期間は僅かの5日間です。アットいう間に終了します。勿論、勝敗は告示日までについてます。
  結果…我が新人候補9513票、敵現職6575票。投票率63.06%。
  我が候補の「圧勝」で幕を閉じました。ハイ、一丁上がり。



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